NOTHING ELSE MATTER

先日行われた10S/S  GIVENCHY MENSWEARのコレクションは、かの Michael Jacksonに捧げられたコレクションとなりました。
「我々はMichaelの新しいスーツを共同で製作していましたが、彼はもうこの世にいません。彼はまさに僕のインスピレーションそのもの。Michaelは3週間前にスタッズの付いたレディースアイテムを着てストリートや人前に出ていました。彼はデザイナーとして私を刺激したのです。今日の私のコレクションを彼に捧げます。」
ショー直後のリカルド・ティッシのインタビューより。まさにMichaelが他界したのは、このコレクションが行われた前日でした…。
次に予定されていた、ロンドン公演での衣装デザインを、ティッシは依頼されており、その大半がすでに完成されていたといいます。もうそれらは世に公開しない、とGIVENCHYサイドは発表。このコレクションがとても秀逸だっただけに、その世紀のコラボレーションを一目見てみたかったという想いを持ったのは僕だけではないはずです。
その秀逸なコレクションのテーマをティッシはこう語っています。
「今シーズンはマスキュリンな要素やフォーマルなスーツなどをより発展させました。そして、私の感情に訴えかける要素を幾つか取り入れました。一つ目はモロッコ。私はモロッコやアルジェリアやチュニジアなどのアラブ各国が大好きです。なぜなら、彼らはエレガンスを持ち合わせているからです。男性たちはどんなデザインを身に付けていてもエレガントで男性的で上品に見えます。」
北アフリカの民族音楽「ギナワ」をバックに、たくましい黒人モデルを多様したトライバルなムード。
アフガンストールを纏ったようなこのTシャツは、そのコンセプトを象徴するアイテムの一つではないでしょうか。

そして、今回のコレクションのインスピレーションとなった人物、Michael Jackson。
前半の2トーンのドレススタイルやゴールドを始めとしたスタッズの装飾、「赤」の巧みな使い方からは、やはりマイケルの影を感じずにはいられません。ギラギラとした80年代のメインストリームからの恩恵を、そこはかとなく表現しているかのようでした。
そして、ティッシが敬愛するもう一人の80年代のスパースター、Guns N’ RosesのAxl Roseの影響も公言しています。
「彼のグランジでリラックスしたスタイルは、今日のメンズウエアの中でも、知らず知らずのうちに影響を受けている部分は多いはず。」
グラマラスな容姿と産業的なスタイルに偏っていた80年代のアメリカンロックを、クールかつワイルドに塗り替え、90年代への橋渡しをした彼のスタイルに、憧れたミュージシャンやファッションデザイナーは多いはず。その中でもティッシは、そのオマージュをより具体的なものにしたようです。

もはやティッシのシグネイチャーとも成り得た、ショートパンツ×レギンススタイルには、アクセルローズからの影響は、少なからず伺えます。特に今回は、ジャージーやこのスウェットといったリラックスした素材を多様し、そのムードはさらに増しておりました。

こんなTシャツもそんなムードありき。
やはり、GIVENCHYにはロックマインドが溢れています。
しかし、00年代のメンズファッションを牽引し、ハイファッションとロックミュージックの相関性を示唆した、「エディー・スリマン」とはやはり趣が違うようです。センシティブでいて知的、そして今にも壊れてしまいそうな不安定さを抱えた「少年性」。それをテーマとしていた「Dior homme」との相違はもはや明らかでしょう。 PHOENIXやMETRONOMY、DRUMSといったお洒落で旬なアーティスト達にフォーカスを当て続けるエディーに対して、ティッシは100%男気に溢れるロックマインドで勝負しています。

1988年に発表された、イギリスのへヴィー・メタルバンド「IRON MAIDEN」の7作目にあたるアルバムカバーが、このTシャツのモチーフになっています。

この「Seventh Son Of a Seventh Son:第七の予言」がリリースされた当時、メタルが世界を席巻しており、またリカルド・ティッシが多感な時期を過ごした時期でもあったため、このムーブメントからは相当な影響を受けたようです。
少年時代、週末は部屋に閉じこもって「IRON MAIDEN」や「METALLICA」を爆音で聴いていた、という逸話も過去のインタビューで公言していました。
ここ日本でも今や、過去の二物的な扱い(失礼ですが)をされているこのムーブメントも、リカルド・ティッシのクリエーションに迫る為には、無視できない存在のようです。
これを機に、リカルド・ティッシに興味をそそられた方は、先日発売になった「VOGUE JAPAN」もご覧になってみて下さい。
人気コーナー、「デザイナーへの100の質問」はリカルド・ティッシでした。
他愛もない質問に対して、赤裸々な彼がとても印象的でした!

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